施政方針
令和7年度施政方針
私の村長としての在職も一年半となりました。私はこれまでの村政運営の中で、コロナ禍の影響等により、止まっていたあらゆる行事を以前のように再開し、その上で検証を行い、次につなげていくという考え方で、昨年の駅伝ロードレース大会を皮切りに、これまで休止していたすべての行事を再開してまいりました。
また、住民に寄り添う施策の展開という意味でも、医療費助成の年齢制限の撤廃・拡充をはじめ、給食費の無償化など住民の皆様にお約束したものの中で、できるものはなるべく早く実現させるという気概をもって取り組みを進めてまいりました。
そのような中で、昨年8月には気象庁から南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表され、村では災害対策本部を立ち上げるなど、対策に万全を期しましが、改めて、災害対策とりわけ津波災害対策に取り組む決意を新たにしたところです。
これからも、持続可能な新島村の実現、未来に向けて住み続けたいと思える新島村の創造を目指し、国や東京都と協力し、さまざまな事業を展開してまいります。
それでは、令和7年度の主要な事業についてご説明いたします。
健全な財政運営を目指して
国は、令和7年度予算編成の基本方針として「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行するための予算とし、経済・物価動向に配慮しつつ、子ども・子育て支援やGX投資推進、地方創生交付金の増額など、重要な政策に重点を置いております。また、地方財政については、人件費増加への対応を含め一般財源総額を確保するため、地方交付税は2,904億円増の18兆9,574億円となっております。
東京都においては、「不確実性が高まる社会情勢の中、『成長』と『成熟』が両立した持続可能な都市の実現に向けて、すべての人が輝く東京の未来を切り拓く予算」と位置付け、「世界で一番の都市・東京」の実現に向けた施策を、積極的かつ着実に展開することを基本方針とする予算となっております。
また、「市町村総合交付金」については、関係者のご尽力により、前年度比85億円増の705億円が計上され、学校給食費の無償化や義務教育就学児医療費助成の所得制限撤廃に対する支援など、引き続き市町村への財政支援が図られております。
当村の令和7年度予算は、一般会計予算額47億7千万円で、前年度比1.2%減、金額にして6千万円減となっております。
移住定住促進住宅整備事業や式根島憩の家プラットフォーム整備事業の完了などにより減少しておりますが、令和6年度から開始した学校給食費の無料化、高校3年生までのインフルエンザ予防接種の無料化、リサイクル家電運搬費の無料化などを継続し、新たに式根島での眼科専門診療の開始など本年も住民目線に立った行政運営を行ってまいります。
また、特別会計の予算総額は6会計で17億3千276万3千円となり、式根島での眼科専門診療開始に係る機器整備等により、前年度比6%の増額となっております。特別会計の各事業については、円滑な運営と安定した住民サービスの提供のため、一般会計からの支援を行ってまいります。
公営企業会計については、簡易水道事業会計の収益的支出が1億4,901万1千円、資本的支出が2,783万2千円となっております。下水道事業会計については、収益的支出が2億6,486万3千円、資本的支出が16億2,016万1千円となっており、式根島地区の下水道整備により大きな予算規模となっております。
国内経済は緩やかに回復傾向にありますが、村内では労働者人口の減少による人手不足など、さまざまな地域課題が山積しております。
今後も、必要性や有効性を検証するとともに、国や東京都と連携を図りながら、補助金などの財源を確保してまいります。また、基金や地方債を有効に活用し、現実的かつ効率的で無駄のない財政運営に努めてまいります。
職員の定員管理・人材育成
行政を取り巻く環境は、社会情勢の変化により課題が多様化しており、高齢化に伴う人口減少、住民の価値観やニーズの変化、厳しさを増す財政状況、地方創生への対応、地方分権の進展に加え、DXの推進など、これまで以上に早いスピードで変化を続けています。
これらに対応するため、限られた職員で効率的な組織運営を行う必要があり、今年度中には機構改革の概要を決定し、来年度からの実施を目指してまいります。行政課題への的確な対応や業務分担の明確化により、より効率的で機能的な体制を構築し、住民サービスの利便性向上を図ることを目的としております。
また、今後の職員の採用や配置といった定員管理についても十分に検討し、計画的に実施してまいります。職員が全体の奉仕者として公共のために勤務し、公務における規律と秩序を維持することを徹底し、職業倫理に基づいた職務遂行に努めてまいります。
住民の生命と財産を守る
防災対策においては、新島村地域防災計画に基づき、住民の生命と財産を災害から守ることを目的としております。
近年の頻発する大規模災害は、これまで経験したことのない異常気象により激甚化しており、災害の発生時期や規模は予測が困難です。そのため、村民一人ひとりが「自分の身は自分で守る」という自助能力を高め、共助の担い手である自治会の防災力を向上させ、事業者の組織力や機動力を活用することで、自助・共助・公助の総合力で対応することが必要となります。
今年度は東京都・新島村合同総合防災訓練を実施し、各種防災機関と連携しながら、実践的な訓練を行い、防災力の向上、住民の防災意識の醸成を図ってまいります。また、災害時における電力供給の確保のため、太陽光発電および蓄電池を活用した電力確保の施設設置事業を引き続き進めてまいります。
消防業務
常備消防のない当村にとって、消防団は火災・地震・風水害など大規模災害時の避難誘導や救助活動を行うため、また、有事における地域の安心・安全を確保するために不可欠です。日夜献身的に取り組んでいる消防団員の皆様に改めて敬意を表するとともに、今後も積極的に活動を支援してまいります。
近年、大規模災害が懸念される中で、消防団員の確保と災害対応能力向上の必要性が以前にも増して高まっております。今後も東京都消防訓練所などの指導を仰ぎながら、消防団の地域防災力の強化・充実に努めるとともに、必要に応じた消防設備の充実や災害に備えた消防施設のあり方などについて検討を進めてまいります。
コミュニティ活動への支援
村民のコミュニティ活動支援については、各町会への活動費補助金および新島村地域力向上事業補助金を計上し、地域課題の共有や解決に向けて取り組んでまいります。
定住化対策および空き家対策
本年度も、移住・定住に関するさまざまな業務に対応できる総合的な支援窓口を外部団体の協力を得て継続運用してまいります。
令和6年度に新島に整備した4戸の移住定住促進住宅を活用し、移住・定住の促進および関係人口の創出を進めてまいります。式根島における住宅整備については、東京都住宅整備本部と連携し、現在協議を進めております。
空き家問題については、令和5年度に実態調査を行い、今後はその結果を踏まえ、所有者の方に適正管理をしていただけるよう積極的に働きかけを行うとともに、新島村空き家バンク事業と新島村定住化対策事業交付金の活用を連動させ、空き家問題の解決に向けて取り組んでまいります。
産業振興について
次に産業振興についてですが、コロナ感染症対策が緩和されたことにより停滞していた社会経済は一昨年から急速に動き始め、以前のような日常生活を取り戻してきました。一方で、当村のみならず全国的に後継者や担い手不足による事業承継問題に直面しております。
これらの解決に向けて、東京都と共に担い手ツアーを開催するなど、継続的に事業承継問題への取り組みを続けてまいります。
また、昨今の円安や世界的なエネルギー価格の上昇などを要因に、さまざまな物価が高騰し、生産コストの上昇による経営への影響は益々大きくなっています。このように、厳しい時代を迎えておりますが、村として、事業者の生産・収益向上のために各種産業団体等を通じて協力および支援を行ってまいります。
農林業事業
農業振興を図るための基盤整備として、令和5年度から実施してきた大原配水池~向山配水池管路敷設工事が令和6年度末に完了しましたので、本年度はこの水源である玄角井戸ポンプの更新工事を行い、安定的な農業用水の供給を図ってまいります。
ソフト面では、新島村独自の農業推進支援事業として、認定農業者や認証農業者の皆様に規模拡大・生産率・出荷率向上を図っていただくため、農業経営支援を継続してまいります。
有害鳥獣駆除対策については、鹿の生息域が山奥へ移り、捕獲が年々困難になってきております。特に新島山は急斜面による地理的条件から捕獲がより難しいエリアですが、有識者や専門家の意見を参考に、捕獲圧を高める施策を今年度から数年間にわたって実施する計画です。合わせて生息状況調査を行い、エリアごとの生息数を把握し、これまでの経験やデータを活かしながら、効率的な捕獲駆除を引き続き実施してまいります。
また、新年度からは従事者の契約形態を個人委託から農協への委託事業として、農協職員として雇用するなどの、更なる処遇改善及び福利厚生の充実を図り、従事者の安定確保に努めてまいります。
森林病害虫防除事業については、薬剤散布や伐倒駆除による処理に加え、抗体液注入による防除を行い、被害拡散防止に努めてまいります。
ふれあい農園では、苗の安定供給と農業技術相談を軸としながら、園芸教室を通じて、種まき作業から収穫までの楽しさや喜びを体感してもらい、農業への関心を高める機会を提供してまいります。
水産事業
次に水産業についてですが、キンメ漁時のイルカによる食害被害軽減に係る費用について、引き続き漁協を通じて支援いたします。また、貝類や藻類等が高水温により著しく減少しているため、稚貝放流を漁協の協力を得ながら継続実施し、合わせてモニタリング調査を行い、現在の環境でも生育しやすい貝種などのデータを蓄積し、今後に生かしてまいります。
漁業体験事業では、中高生を対象に計画し、漁業や海産物への興味関心を体験により広げてまいります。
水産加工業については、特産品である「くさや」の安定的な生産と生産効率向上のため、乾燥機および焼成機の更新工事を昨年度終えたところですが、令和7年度は特産物流通センターの屋根老朽化改修工事を実施し、業務運営の環境改善を図ってまいります。
観光・商工事業
観光・商工振興については、島内経済の循環促進のため、商工まつりや年末福引事業、ICTを活用した特産品の普及および広域的な販売促進事業を支援し、商工業の振興を図ってまいります。
観光事業として、新島・式根島の魅力をより多くの方に知っていただくため、さまざまな情報を発信し、物産展などに積極的に参加することで、対面による情報発信やPRを行ってまいります。また、友好町村を含めた自治体連携について、物産展参加をはじめ、相互に連携をとり、関係強化に努めてまいります。
温泉の維持については、定期的に温泉ポンプの点検や交換を行うことで安定供給を図り、住民や来島客の皆さまに楽しんでいただけるよう努めてまいります。
遊泳場の管理においては、海上監視や海岸清掃を実施し、安心・安全の確保と美化に努めてまいります。
各種集客イベントについてですが、昨年は新島トライアスロン・式根島マラソン大会において、ようやく式典パーティーを再開することができました。また、セブンクロスサーフマスターズは5年ぶりに開催することができました。これらの集客事業は、ハイシーズンを避けて開催することで、通常期の観光や商工の活性化と平準化を図ってまいります。
日本全国が総観光地化され、また、インバウンドの影響から競争が一層激しさを増しているところですが、新島・式根島へご来島いただくために、観光協会に対し、情報提供・案内対応などのサービス向上のため支援と協力を行ってまいります。
また、新島の観光協会が解散して2年が経過しようとしています。村では、地域おこし協力隊を配置して、新島の観光案内窓口事業として観光客の方々の対応を行っていますが、今後、観光に関わる組織の必要性やその体系について、民間の力を活用しながら、更に協議を進めてまいります。
以上、産業全般について述べさせていただきましたが、どの産業を取ってみても、人材不足・高齢化・事業継承などの課題に直面しております。今後も各団体を軸としながらも、関係団体をはじめ事業者と連携を密にしながら産業振興に取り組んでまいります。
健康で明るい暮らしのできる村を目指して
昨年から年齢制限撤廃及び支援内容拡大を実施しました「島外受診交通費等助成事業」では、多くの住民の皆様から利用いただき、これまで助成の対象にならなかった方々や、利用回数制限により年度後半の利用が制限されていた方々からは一定の評価をいただいておりますが、利用の際に多少の手続きが必要となるため、初期の段階では「面倒だ」という声もありました。これについては、職員が丁寧に内容等を説明し、今ではおおむねご理解いただきご利用いただいております。令和7年度も継続実施するとともに、実績等を踏まえ検証し、更に改正が必要であれば検討を進めます。
青葉会館及び式根島福祉健康センターについては、地域福祉や高齢者福祉の拠点として、高齢者や小学生の放課後の居場所、交流の場として利用されています。これからも多世代交流の場として、子どもから高齢者まで多くの村民にご利用いただけるよう、関係機関と協働して取り組みを進めてまいります。
式根島温泉憩の家は、昨年度、大規模改修工事の実施に伴い、1年間にわたり休館しましたが、改修により広くきれいになったほか、バリアフリー化やデジタル技術を活用した健康管理システムの導入など、安全性や機能性も向上しています。住民の皆さまはもちろん、観光客の方々にも快適にご利用いただける施設となるよう、運営してまいります。
新島老人ホームについては、今後も健全な施設運営に必要な支援を行ってまいりますが、並行して運営母体であるはまゆう会に対し、現状の整理・分析を行ったうえで、経営の改善を促していきます。また、数年来の課題である働き手不足についても、島内での人材育成に注力し、安定的な人材確保が実現されるよう支援してまいります。
高齢者福祉については、独居高齢者や高齢者世帯への見守り活動を中心に関係機関と協力し、個々が抱える諸問題に寄り添いながら対応していきます。また、今年度から聴力低下により日常生活に支障がある高齢者に対し、「新島村高齢者補聴器購入費助成事業」を創設し、生活支援および積極的な社会参加を促すとともに、認知症予防の一助とし、高齢者福祉の増進を図ってまいります。
障害者福祉については、障害者が必要なサービスをスムーズに利用できるよう、障害者・障害児の相談支援体制の強化を図り、障害者の方が自立した生活を送れる仕組みづくりを目指してまいります。また、昨年度から拡充施行した「障害者等島外通院支援事業」についても継続実施し、障害者等の負担軽減を図ってまいります。
児童福祉については、生活形態の多様化に対応するため、「新島村版だれでも保育」の実現に向け、村立保育園の施設整備を具体的に進めるとともに、保育人材の確保に注力していきます。また、心理士による保育園児の園内での行動観察および心理判定を行い、専門的な助言・指導を受けながら「心身ともに健やかな成長を支える保育」を目指してまいります。
子育て支援については、「子ども家庭支援センター」を廃止し、今年度から新たに「子ども家庭センター」を設置し、0歳から18歳未満の子供及び家庭の困りごとに対応するセンターとして、母子保健事業との連携や関係機関との協力体制をより強固にし、切れ目のない支援を行ってまいります。
国民健康保険事業については、高齢者や低所得者の加入割合が高いことなど、構造的な問題を抱えており、事業運営は依然厳しい状況にあります。財政運営の責任主体が東京都となり、国保税の負担が増大していますが、当村においては急激な負担増とならないよう、東京都の理解を得ながら税額を調整するとともに、収納率の向上に取り組み、事業の健全化を図ってまいります。また、医療費の削減については、特定健康診査の受診率向上や生活習慣病予防のための生活指導の充実を図り、さわやか健康センターをはじめとした関係部署とともに、取り組みを進めてまいります。
健康診査や各種がん検診については、健診後の結果説明や精密検査が必要な方への対応を含め、疾病の早期発見・早期治療につなげられるよう事業の充実に努めてまいります。
母子保健事業については、「子ども家庭センター」の体制のもと、従来から実施している乳幼児健診や子育て相談、あそびの広場の定期的な開催を継続し、妊産婦・乳幼児・保護者の心身の健康増進の支援を行ってまいります。
予防接種事業については、住民の感染症予防や重症化を防ぐため、小児の定期予防接種スケジュールの相談をはじめ、季節性インフルエンザワクチンや新型コロナウイルスワクチン接種などを診療所と連携して対応してまいります。
健康増進事業及び介護予防事業については、予防リハビリ教室や若返り体操教室、高齢者の健康課題に対応した講座などを開催し、住民の健康意識・予防意識の向上に努めるとともに、住民主体による介護予防グループの活動支援にも力を入れてまいります。
食育事業については、令和8年3月の第四次新島村食育推進計画の策定に向け、5年ごとに実施しているアンケート調査などの評価を行ってまいります。食を通じた健康づくりが展開できるよう、より新島村の実情に即した計画を策定し、関係機関や地域と一層の連携を図ってまいります。
安心と信頼性のある医療業務
診療所においては、医科・歯科ともに、東京都並びに協力病院などのご尽力により、本年度においても医師の不足は生じておりません。今後も、協力病院などとの連携を密にし、良好な関係を築くことにより、特に医師の確保について万全な体制を構築してまいります。また、昨今の薬剤不足による影響は依然解消の見込みが立たない状況ですが、様々な手を尽くし何とか確保するよう努力していきます。
専門診療については、順天堂医院並びに昭和大学病院のご協力のもと、6科19回延べ38日実施をしてまいりますが、新たに東京都との連携により日本赤十字社東京都支部協力のもと、式根島において眼科専門診療を実施します。
診療所内の設備、機材などにつきましては順次更新しており、本年度の主なものとして、本村診療所は透析に関わるA・B剤溶解装置の更新、式根島診療所は眼科専門診療実施に向けた検査機器の購入を予定しています。今後も計画的に更新を進めるとともに、機器の充実を図ることにより、より良い医療を提供できるように努めてまいります。
生活の基盤整備
道路整備事業についてですが、新島地区においては、低地に位置し豪雨時に冠水の恐れがある路線から整備を進めておりますが、令和7年度からは「村道堀端線舗装新設工事」を実施してまいります。また、現在、通行禁止区間のある村道「羽伏浦バイパス線」については、今年度から調査・測量業務に取り掛かる予定です。「和田浜線」につきましては、引き続き海岸線の東京都の保全対策と並行し、対策を講じてまいります。式根島地区においては、「下水道整備事業」を優先的に促進し、それに併せて道路整備を進めてまいります。
日頃の維持管理については、路面や交通安全施設を日々点検し、不具合や危険箇所を速やかに補修・清掃し、安全・安心な村内通行の確保に努めてまいります。
無電柱化事業については、防災機能や安全性の向上、良好な景観の創出のため、令和7年度から新島空港からヘリポートまでの「村道空港北線」の工事着手を予定しておりましたが、東京都道無電柱化事業との兼ね合いから1年間延伸となり、令和8年度からの工事開始を予定しております。
公園事業については、令和6年度に「子どもの遊び場整備事業要望調査」を実施し、新島・式根島の子どもたちがどのような遊び場を必要としているのか意見聴取を行いましたが、その内容等を参考に、新島村の遊び場整備を推進してまいります。また、幼児から高齢者まで住民の憩いの場となるよう施設の安全性を常に考慮し、維持管理に努めてまいります。
村営住宅施設維持事業については、経年劣化などに伴う大規模改修について、「公営住宅等長寿命化計画」に基づき計画的に実施してまいります。令和7年度は、新島地区において「新原住宅外壁塗装及び屋上防水工事」を、式根島地区においては「野伏住宅外壁塗装及び屋上防水工事」を実施する予定です。
日々の管理においては、故障や不具合に即応するとともに、入居者の退去時に合わせたリフォームを行い、住宅機能の改善および利便性の向上に努めてまいります。
簡易水道事業については、令和7年度に「経営戦略改定業務委託」を実施し、優先順位や他事業との連携、財源確保の見通し等を勘案し計画を策定するとともに、より一層健全な運営に努め、安全・安心な水道水の安定供給を図ってまいります。
下水道事業については、本村処理区の全面供用開始に向けて、管渠敷設工事を引き続き実施し、接続率の向上を図ってまいります。式根島処理区については、管渠工事を計画通り進めてまいります。処理場工事については建築工事が完了し、本年度は塩素混和池・放流渠の土木工事、また、昨年度から継続工事として水処理施設の電気機械設備工事を進めてまいります。
昨年度から移行した公営企業会計について、上下水道事業とも、より安定した事業運営を図るため、国および東京都の動向を注視し、補助金の確保に努め、健全な財政運営を進めてまいります。
港湾整備については、離島の住民生活にとって重要なライフラインであり、産業・経済の振興に欠かせない基盤施設です。国および東京都の整備計画を踏まえ、海運業者や漁協等の関係者から意見を聴取し、整備手法や優先順位について村として要望を一本化し、事業の早期推進に向け、議会をはじめ関係各位とともに積極的な要望活動を行ってまいります。
また、数度の不調により未着工となっている式根島野伏漁港船客待合所の建て替え事業につきましては、東京都において、再度、起工に向けて調整中であることを確認しております。
連絡船事業
連絡船につきましては、令和5年2月の座礁事故がまだ記憶に新しいことと思いますが、二度とあのような事故を起こさないよう、職員一同一致団結し、徹底した安全管理運航に努めてまいります。
これまで「にしき」のドック中には、漁船などを借り上げし、代船として運航してまいりましたが、前年度より小型船舶「さじま」を購入し、利用を開始しました。それに伴い、従来の代船よりも定員が大幅に増え、小荷物・手荷物の取り扱いも可能となりました。また、快適性や安全性も向上しており、「にしき」不在時のご不便を大幅に軽減できたものと考えております。
今後とも、さらなる安全性の向上を図りつつ、より快適にご利用いただけるよう、気を引き締めて運航してまいります。
教育・文化の振興
「学校教育」については、子どもたちが新しい時代に必要とされる資質や能力を育むことを最優先の目標としている「新島村連携型一貫教育」を推進しております。幼少期からの学びを基盤にし、段階的に発展させることで、子どもたちが自らの可能性を最大限に引き出せるような教育環境を整え、教育施策の重要な柱としてまいります。
式根島学園におきましては、少子化が進む中で、児童生徒にとってより良い教育環境を求め、将来的な小中学校の適正配置に向け、学校・保護者・地域の皆さまとよく話し合い、地域に開かれた学校の整備として、施設一体型および義務教育学校に向けた具体的な計画策定について協議会を立ち上げ、検討してまいります。
学校における児童生徒数の増加は、集団学習や部活動の活性化を促進し、良好な学習環境の確保に寄与すると考えております。このような背景のもと、新島高校への「離島留学」プログラムを実施しております。しかし、令和7年度の受け入れについては、ホームステイ先の確保が難航し、受け入れを断念せざるを得ませんでした。次年度以降もホームステイ先の発掘・確保に努めるとともに、継続的な支援が可能な寮や宿舎の整備についても、村内の住宅状況を考慮しながら、検討を進めてまいります。
私は子育て環境の充実と子育て支援を重要な施策として位置付けております。その一環として、昨年度から「管内小中学校児童生徒の給食完全無償化」を実施し、家庭の経済的な負担を軽減し、栄養豊富な給食を提供できるようにしました。令和7年度以降もこの無償化を継続してまいります。
学校給食においては、地元産品の利用を促進することも重要な目標としております。地元の農産物・海産物を積極的に取り入れることで、子どもたちに新鮮で安全な食材を提供できるよう努めてまいります。併せて、関係機関との連携を更に深め、地域全体で子育てを支える環境を整えてまいります。
次に奨学金についてですが、就学支援を通じて有能な人材を育成することを目的とし、「新島村育英資金貸付事業」を実施しております。この事業は、学生が学業を続けるための教育費負担の軽減を図るものでありますが、新島村の人材確保の一助となるべく、令和7年4月から、この育英資金の貸付を受けた方々が大学や専修学校を卒業したのち、村内に住所を有し居住した場合には、その居住期間に応じて償還を免除する新たな制度を整備しました。
GIGAスクール構想に基づき、児童生徒一人一台の端末が整備され、令和7年度にはその更新時期を迎えます。ICTの推進につきましては、ICT支援員による専門的な支援を継続することで、児童生徒がデジタル社会において必要なスキルを身に付けられるよう努めてまいります。
当村に限らず、全国的に見ても、困り感や障害を抱える児童生徒が増加傾向にあります。このような状況を踏まえ、一人一人の実態や特性を丁寧に把握し、各児童生徒が持てる力を最大限に発揮できるよう、特別支援の充実に努めてまいります。
また、不登校の児童生徒に対しては、「新島村教育支援センター」を中心に、安心して過ごせる場所を提供し、自分のペースで学びを進める支援を行うことで、学校復帰に向けたサポートを行ってまいります。
「社会教育」については、地域全体で子どもたちの学びや成長を支えるために、幅広い地域住民の皆さんの参加を得て「学校を核とした地域づくり」を目指しています。この取り組みの一環として「地域学校協働活動」に着手しました。この事業は、学校と地域が一体となって、子どもたちを育てるための重要なステップです。
令和7年度においては、この活動をさらに活発化させるとともに、学校と地域の連携・協働を一層推進していくためのコミュニティ・スクールの具体的な仕組みや体制の検討を進め、保護者や地域住民等が学校運営に必要な支援について、協議する場である「学校運営協議会」の令和8年度の設置を目指したいと考えています。
また、「放課後こども事業」は、子どもたちにとって放課後や週末の貴重な遊びと学びの場を提供する重要な取組です。この事業において、NPO団体の果たす役割は大きく、地域社会における教育の質を向上させるためのパートナーとなっています。今後も学校と地域全体の社会教育の向上に向けて、役割を高めていくことを期待しています。
友好町村との交流事業では、令和6年に山形県鶴岡市(旧羽黒町)との友好都市盟約が40周年を迎えました。この節目を機に、他の交流町村との関係も深め、相互理解と郷土愛を育む機会を創出してまいります。
「生涯学習、文化振興」については、引き続いて、博物館を主として、村民への学習や文化に触れる機会を創ると共に、自然や歴史・文化に関する発信活動や啓蒙活動を行ってまいります。
現在取り組んでいる「新島村生活調査」については、次年度も継続して行い、村の歴史と独自の文化を大事にしつつ、次代に繋げていく大きな財産として活用していけるものと考えています。
また、新島村独自の歴史や文化について改めて見直し、これからの地域づくりに活かしていく取り組みが望まれています。ユネスコの「無形文化遺産」に登録された「大踊」や、「国の有形登録文化財」として相次いで登録された「コーガ石造建造物」など、無形・有形文化財を、世界や国に認められ評価されたことをもキッカケに、新島村の誇れる文化・資源として、キチンと見直し、後世に引き継ぐと共に、現在の地域づくりにも積極的に活かしてまいります。
以上、令和7年度の施政方針について申し述べさせていただきました。
村民の皆様並びに議員各位におかれましては、なお一層のご支援、ご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。
令和 7年 3月 6日
村長 大沼 弘一
新島村役場企画財政課企画調整室
〒100-0402 東京都新島村本村1丁目1番1号
電話:04992-5-0204内線204 FAX:04992-5-1304