診療所便り­~Vol.­14~ It's Not Too Late. 

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It's Not Too Late. 小林正宏

 

JCHO東京新宿メディカルセンターの小林です。昨年の4月から9月までの期間も当診療所に赴任していたので、今回お世話になるのは2回目です。去年は岡田先生と村井先生とともに業務にあたっていたことが、懐かしく思い出されます。村井医師は7月で任期を終えて戻られましたが、その人生経験を生かした独特のキャラクターで、島民の皆様の心を掴み、いまなおファンが多いと聞いています。島から帰る日には、飛行場に多くのファンが詰めかけたといいます。

村井先生の経歴は以前のコラムでも書かれているので、当コラムファンの皆様にはおなじみの事だと思います。ざっと復習すると、薬剤師の資格を得た後、共同通信社の記者として世界中を飛び回り、40代にして一念発起、アラフィフで医師の資格を取得。日本とパプアニューギニア、新島を股にかけて活躍し、将来はカリブ海に小さな診療所を開くという野望まで抱いています。

今回は、そんな村井医師の人生に因んで、「It’s Not too late.(何かを始めるのに遅すぎるということはない)」というお話です。

 

COPDという病気

COPD (Chronic obstructive Pulmonary Disease,慢性閉塞性肺病変)という病気をご存知でしょうか。難しく言うと、「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患」です。肺気腫、とかタバコ病という名前であれば、なじみがある方もいるかもしれません。どんな病気かを簡単に説明すると、長年の喫煙によって、肺の中の細い気管支がダメージを受けて、徐々に狭くなります。すると、呼吸の時に、吐き切れなかった空気が肺の中に溜まっていきます。その結果、肺が無理に広げられることになり、少しずつ壊れてしまうのです。正常な肺がスポンジだとすると、COPDの肺はヘチマのようにスカスカになっています。運動した時の息切れや、動悸などといった症状が現れ、吸入薬や、在宅酸素療法によって症状を軽減させる治療を行いますが、進んでしまった状態を治すことは現在の医学できません。

70歳以上の高齢者では、診断されていないだけで、およそ6人に一人もの方が罹っているとされています(出典:福地らNICE Study. 2001年)。2014年の厚労省統計では、日本人の全死因10位に位置しており、WHOによると、2030年までには世界の死因の第3位を占めるようになると推定されています。これから確実に存在感を増してくる病気の一つなのです。

近年は、世界的な禁煙促進の流れが高まっており、喫煙人口が減っていく傾向にある一方、タバコによる肺への影響というのは、20年ほど遅れて出てくるので、C OPDの猛威はこれからが本番なのです。

寿命を11分延ばす方法

医療の世界で、"It's Not Too Late."といって思い浮かぶことといえば、禁煙です。どの時点からであっても、禁煙すれば、そのまま禁煙を続けた場合に比べて、呼吸機能の低下は緩やかになるといわれています。

喫煙者と非喫煙者の寿命の差は、いくつかの統計で似た結果が出ており、おおむね10年くらいとされています(当然、喫煙者の方が短い)。タバコ1本あたりでいうと11分くらいになる計算です。おおざっぱにいうと『タバコを1本控えれば寿命が11分延びる』と言い換えることもできます。

仕事を定年まで全うし、さあ第二の人生だ、というところで息切れのために満足に外出できなくなったり、酸素ボンベを引いて生活しなければならないというのは切ないものがあります。禁煙とは、喫煙者だけに可能な寿命延長法なのです。

2002年から毎年、世界COPDデーという日が制定され、世界各地でイベントが催されるそうです。毎年11月に行われており、今年は奇しくも18日がその日にあたるので、今月のコラムのテーマとしてタイムリーかと思った次第です。世界COPDデーの今年の標語がまさに”It’s not too late.”なのです。新島では球技大会が催され、一部の島民の間で盛り上がるそうです。ふと、本日のお話にも思いを馳せてみてくださいね。

 

2015年11月 小林正宏

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