診療所便り~Vol.9~
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御礼 貝原俊樹
今月のコラムを担当する式根島診療所の貝原です.今回は新島村の方々への御報告と御礼です.結構硬い話です.
3年前新島村本村診療所に赴任していた際,血圧について臨床研究を行っておりました.医学で言うところの「研究」というのは,医学の世界でまだ分かっていないこと,医師がなんとなくそうだと感じてはいるが証拠がまだないことを実証するというものです.一般的に研究は「基礎」研究と「臨床」研究に分かれます.基礎研究は試験管を振るような,どちらかと言うと研究室にこもっての研究で,臨床研究は日々の診療の中で医師が疑問に思っていることを解明するために行うものです.
さて,血圧というのは健康な人が医療に触れる最も身近なツールかもしれません.血圧のコントロールが良いと脳出血や心筋梗塞などの重大な病気になる確率が減るのですが,そもそも血圧をコントロールするには医師が患者さんの血圧を知らなくてはいけません.最近は家庭血圧計を持ってらっしゃる方が増えましたが,その血圧データを診療所にわざわざ持って来るのは面倒くさいと思う人もいるだろうなあとうっすら感じておりました.
先の臨床研究では,本村診療所に定期受診されている方を対象として(赴任期間の関係もあり,60名の参加で打ち切りました)「家庭血圧遠隔モニタリングシステム」を搭載している血圧計が役に立つかを調べていました.これは,家庭で測った血圧が携帯電話の通信と同じ回線で医師のパソコンへと自動的に届くというものです.これを使うと,家で血圧を測りさえすればわざわざ診療所に血圧データを持って来る必要性が無くなるわけです.
結果としてはこのシステムを使うと収縮期血圧(上の血圧)が若干下がったので(平均で6~7mmHg位),国際的な医学雑誌に掲載してもらいました.新島村発のデータが全世界(特に世界中の離島住まいの人々)に貢献したと思うと,なかなか壮大ですね.
最後に,研究に参加して頂いた方にはご協力ありがとうございました.この場を借りて御礼申し上げます.このシステムは血圧ばかりでなく,内地に住む御家族が受け手となれば「あ,お母さんは今日の朝もしっかり血圧を測っているな(測った時刻も転送されるのです)」というように毎日家族が元気でいることをチェックするのにも有用です.システム上の問題もあってすぐに実用というのは難しいですが,近い未来にこのシステムが新島村だけとは言わず日本中で使われればいいなと思っています.
2015年6月 式根島診療所長 貝原俊樹
新島村国民健康保険本村診療所
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